血栓溶解化合物をカビから発見 製薬化目指す 東京農工大

毎日新聞ニュース速報

心筋こうそくなどの原因となる血栓を溶けやすくする化合物が、「スタキボトリス」というカビから生成されるのを、東京農工大農学部の蓮見惠司教授(生理活性生化学)の研究グループが発見した。経口投与しても肝臓で分解されない低分子で見つけたのは初めてという。ラットを使った実験ではほとんど副作用がなく、蓮見教授は「製薬化を目指したい」と話す。
研究グループは、約8000種類のカビや放線菌が作り出した化合物について調べた。肺動脈に人工的に血栓を作ったラットに、これらの化合物を注入し、血栓の溶ける速さを測った。すると、土壌にいる「スタキボトリス」というカビが作り出す化合物「SMTPー7」を体重1キロ当たり5ミリグラム注入したラットは、注入しなかったラットに比べ、血栓の溶ける速さが注入直後に約3倍に上がった。SMTPー7が血栓を溶かす酵素「プラスミン」をスムーズに作り出すためという。
さらに、心筋こうそくの発作直後の患者に用いられる血栓溶解剤のたんぱく分解酵素「ウロキナーゼ」とSMTPー7を一緒に用いた場合、ウロキナーゼだけの時と比べ、血栓の溶ける速さは約2倍に上がった。
ウロキナーゼは血栓を溶かすのを促進する一方で、脳出血などの副作用がある。研究グループによると、SMTPー7はウロキナーゼと全く異なったメカニズムで働くため、副作用はほとんど出ないという。

毎日 2003/6/7